ニューヨークの地質はマンハッタン片岩という硬い岩でできているけれども、地下利用が盛んという話が下記動画でありました 文献1。
ちなみにアメリカ地質調査所(USGS)が整備しているマンハッタン島とその東側対岸の地質図でもピンク色のマンハッタン片岩が覆っていることが分かります文献2。
ここでふと疑問に思ったんです。東京のように河川が運んだ土からできている沖積平野 文献3なら柔らかいので掘るのも簡単だと思うんですが、動画や文献4に見られるような硬い岩だと掘るのが大変ではないかと。それなのになんで地下利用が盛んだったのかなと。
まず硬い岩と柔らかい土でトンネルを掘る速度がどれくらい違うかというと、実はそんなに変わらないようです。というかむしろ柔らかい土のほうが遅いくらいです。
東京の地下鉄や、リニアのトンネル掘削ではシールドマシンが使われていますが、平均10[m/日]が目安とされています文献5文献6。
他方ニューヨークでの地下鉄工事では、まさに今回の硬い岩でも平均で15[m/日]掘り進めることができたといいます。また技術もトンネルボーリングマシン(シールドマシンと同様のもの)だけでなく、爆薬による発破も広く活用されたようです文献7。
今リニア工事などで使われているシールドマシンは戦後に登場したものですが、発破工法であればニューヨークの地下鉄が作られた120年前にも使われていたはずで納得です。
また硬い岩盤ということは、(ちょっと適当に)トンネルを掘っても崩れない、ということで、地下利用にはもってこいだったんですねー。
そしてこの数億年前のパンゲア以来、地震もなく安定している文献8マンハッタン片岩があったからこそ1930年代から始まるニューヨークの摩天楼の荷重を支えることができたんですね文献9。
その結果、都市交通も土地活用も高度化が進んで、都市の発展が止まらずにすんだというわけでした。
- 地理ライダー、"ニューヨーク・セントラルパークのマンハッタン片岩 | 摩天楼を支える約5億年前の変成岩を見に行こう"、YouTube(参照2025-05-15)↩
- Baskerville, C.A.、"Bedrock and engineering geologic maps of New York County and parts of Kings and Queens Counties, New York, and parts of Bergen and Hudson Counties, New Jersey"、USGS National Geologic Map Database(参照2025-05-20)↩
- 地質調査総合センター、"都市域の地質地盤図"、産総研(参照2025-05-20)↩
- GIPH事務局、"アメリカ,ニューヨーク州:セントラルパークの岩石露頭"、GeoInformation Potal Hub(参照2025-05-20)↩
- NHK、"リニア中央新幹線 川崎市 大深度地下の掘削現場 工事はどう進む 開業見通しは"、NHK首都圏ナビ(参照2025-05-20)↩
- 一般社団法人 日本地下鉄協会、"さて、これはいったい何でしょう?"、チカテツ「100知りのススメ」(参照2025-05-20)↩
- 伊藤みろ、"ニューヨークの地下を発破で掘る"、日経XTECH(参照2025-05-19)↩
- "マンハッタン"、Wikipedia(参照2025-05-20)↩
- "ニューヨーク市の歴史"、Wikipedia(参照2025-05-20)↩